遠藤佳三『お笑い作家の東京漫才うらばな史』(演芸書籍類従)

遠藤佳三『お笑い作家の東京漫才うらばな史』

青蛙房 2002年

 小島貞二門下で、笑点のチーフ作家としても知られる遠藤佳三が、40年以上の演芸作家生活を記念して書き留めた「演芸作家回顧録」というべき一作です。何かと語られない「裏方から見た東京漫才や演芸」を貴重な写真と共に紹介しています。

 遠藤佳三氏には生前お世話になり、今でもいろいろな思い出があります。2年ほどの短い付き合いであったが、短いも濃い付き合い――氏のお陰で判った記録や進展した調査もあります。

 余談も余談ですが、この本の中で紹介されている写真の多くは、巡り巡って僕の手元におさまる事になりました。サイトで紹介している写真のそれは遠藤氏から直接いただいたものです。

 元々東京外大を出て、広告代理店につとめていた遠藤氏ですが、「演芸作家になりたい」という一念で脱サラし、小島貞二の門下に入った――という変わり種です。この会社を辞めて小島貞二門下に入る所から物語が始まります。

 はじめは顔を売る所からはじまり、執筆の基礎や演芸番組の裏表、当時の芸人の秘話から笑点のバイト――と、1960年代のお笑いブームの実態が生々しく描かれています。

 明治・大正・昭和と入り混じっていた時代、大御所から新人まで様々な芸人たちが出入りするのも特徴でしょう。

 小島貞二から独立して、「演芸作家」として一本立ち。ふとした事から漫才コンクールの台本を書くようになり、青空千夜・一夜、青空はるお・あきおの作品でヒットを飛ばしたのを機に、本格的に東京漫才界とかかわりを持つようになります。

 何かと主流の漫才師しか語られない中で、「グループ21」の実態や当時の漫才師達の噂、コンビの悲喜こもごもなど、直接見聞きした当人でなければ書けないことを優しい文体でズバズバ書いていきます。

 グループ21の話などは、遠藤氏当人から随分と伺いましたが、今となってはここでしかわからないものも多々あります。

 演芸ブームの終息からバラエティー番組の勃興、さらに漫才ブーム――という狂乱から、青空はるお・あきおを筆頭に、有力コンビの解散など、あるがままを綴られています。

 本来なら書くのを控えるであろう「東京漫才の衰退」という痛恨事を「どうして衰退したか」「何にに問題があったか」といった反省を踏まえて書いているのも大きいです。

 ほとんど記されてこなかった「東京漫才の実態」というものを兎に角赤裸々に描いた――これだけで買う価値があるものです。兎に角、東京漫才や演芸ブームを考える上では絶対に欠かせない一冊でしょう。

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