相羽秋夫『漫才入門百科』
弘文出版 2001年
262頁 サイズ・A5
関西の演芸評論家・相羽秋夫が執筆した漫才入門書です。
その名の通り、「漫才とは何か。どういう歴史を辿って来たか」という基本的な謎から、漫才師達の系譜、漫才で演じられた珍芸や音頭の一覧、漫才師になるための手段、漫才を見る事ができる劇場や寄席までありとあらゆることが紹介されています。
2001年に発行された事もあり、今となっては古い情報が散見されますが(特に公演情報)、漫才の歴史や説明に関しては今なお色あせる事はありません。
1960年代より松竹の社員として、また1980年代からは一人の演芸ライターとして様々な芸人や落語家と携わり、至芸・名人芸から珍芸・奇芸まで見て来た相羽氏ならではの批評眼や美学が散りばめられています。
特に貴重なのが「珍芸・奇芸」と呼ばれる部類のものです。普通の漫才史なら見落としてしまうような、曲弾き、後ろ面、アクロバット、民謡や俗謡といったものまで取り上げているのがすごい。
こうした雑多な芸が集って漫才が成立した――という漫才の複雑性もきちんと説明してみせようとしています。この本から知った珍芸、漫才師の数はどれだけいるでしょうか。
管理人から見ればこれはある意味で漫才研究を志すきっかけとなったバイブルのようなものです。ほとんど評価されていないのが惜しいですが、入門書としては『漫才世相史』と並んで――見方によっては、漫才世相史よりも上等の作品ではないでしょうか。