室町京之介『漫才千夜一夜』
『漫才千夜一夜』は、『内外タイムス』(1951年10月18日号~27日号)に掲載された演芸作家・室町京之介の連載です。
掲載紙が掲載紙だけになかなか下世話な話題もあるのですが、それを差し引いても当時現役だった漫才師の経歴や逸話が掲載されていて貴重です。
室町京之介が東京の演芸界で活躍していた関係から、「東京漫才」を取り上げているのも大きな特徴といえるでしょう。秋田実や吉田留三郎に代表される関西勢が関西の漫才師を取り上げる事はよくありますが、東京漫才の連載は少ないだけに本当に貴重です。
青柳ミチロー・柳ナナ、英伊佐男・川端やなぎ、大津お萬など、戦前戦後の一時期活躍していたがその素顔がよくわからない――という人物も、この連載の中の記載によって経歴が判明したという例もあります。
余談も余談ですが、この連載があることを知ったのは東喜代駒が遺して置いたスクラップブックを見ておいたおかげです。ご遺族のご厚意でみせて頂いたスクラップブックの中にこの連載が貼ってあり、そこから割り出した――という次第です。
思わぬ所から資料は出るものなので、よくアンテナを貼っておくべし、といういい教訓となりました。
最後に連載一覧を紹介しておきましょう。これも書籍化されてないはずなので、どこかで明文化にしておきたい次第です。
10月18日号 逸物の挨拶にゴ祝儀 女房から離縁状を貰ったミルク
10月19日号 新機軸の洋服マンザイ エンタツ・アチャコの名コンビ
10月20日号 舞台前にチョイ一 おつとめ欠かさぬ捨丸の”趣味と実益”
10月21日号 風呂の水を廊下に流す 大津お萬ハワイ滞在中の珍談
10月22日号 小さな身体に大きな望 ナナ、ミチロー、比呂志の立志伝
10月23日号 純綿と名がつき 囚人服を頂戴した伊佐男と馬風
10月24日号 米屋の旦那から舞台へ 「漫芸道場」の看板を出す東喜代駒
10月25日号 酒で殺してネタを盗む 四種の漫才をやりこなす荒川清丸
10月26日号 女剣劇の座長から漫才へ 日活出身小原妙子の数奇な半生
10月27日号 ”花電車”に噛みつかれる 「玉の井の助六」喜代駒も顔負け