轟ススム

轟ススム

轟ススム・旗上ヒロシ

轟ススム・丘コエル(右)

轟ススム・丘コエル(右)

 人 物

 とどろき ススム
 ・本 名 横山 亀雄
 ・生没年 1924年10月7日~1977年頃
 ・出身地 徳島県

 来 歴

 ハーモニカ漫才の大御所の一人。戦前からハーモニカを武器に、漫才を展開。大空ヒット、松平操などと共に漫才の中に、ハーモニカを取り入れた功労者と言えよう。

 出身は徳島。幼いころは謎が多く、娘の夏美氏も「よく知りませんし、話も聞いたことがない」という。過去を話さなかったのか、後述の理由の通り、家族との関係が響いているのか不明。

 元々は舞台俳優にならんと単身大阪へ上ったが、間もなく漫才へ転向。上方漫才の人気者であった轟一蝶に師事する。『芸能画報』(1959年4月号)のプロフィールが詳しいので引用。

ススム ①横山亀雄②大正13年10月7日③徳島④舞台俳優を志し単身上阪、轟一蝶に師事する。後篭寅演芸部で三羽烏の一人として活躍。ハーモニカの権威。

 上方で修行を積んだ後、「轟ススム」と名乗り、籠寅興行と契約を結ぶ。以来、東京と関西を行き来する生活を送るようになった。

 1939年4月、籠寅演芸部の漫才大会に出演。

四月十七日〜(二十六)日 南座 籠寅演芸部 時局まんざい大会

【出 演】関東側 轟スゝム・サノアケミ 永田繁子・女一休 吉原家〆吉・〆坊 唄の家成太郎・なり駒 端唄とん子・美代司 ピツコロシヨウ 永田一休・和尚 菊川時之助・大津検花奴 春風小柳・桂木東声 カクテルシヨウ(カクテルジン ウイスキー ベルモットマンハッタン ウオツカ キユウラソ)

 同年10月1日、浪花座で行われた「籠寅のまんざい秋季大会」に出演。

ススム・アケミ、尚子・代志子、里子・文弥、色香・圓太郎、華枝・茶福呂、駒坊・成駒、種二・ちどり、捨丸・春代、端唄とん子・美代司、小夜子・直之助、ナンジャラホワーズ、アクロバツチツクバー。

(『近代歌舞伎年表京都篇 第十巻』)

 長く新興演芸部と籠寅の看板として売り出すが、戦局悪化に伴い、仕事もままならなくなる。 

 上記の三羽烏とは、坂野比呂志、大朝家シゲオ(玉川スミの夫)、轟ススムを指し、売れっ子であると同時に喧嘩っ早い面々を総括したもの。

 戦前はサノアケミや轟八重子といった女性とコンビを組んで浅草の劇場に進出。

 ハーモニカの曲弾とタップダンスを得意とし、トリネタはハーモニカとタップダンス、ハーモニカとギターの曲弾など、大熱演の舞台を展開した。

 普段は芸熱心であったものの、喧嘩っ早い上に酒癖が悪く、家族や同業者から随分と恐れられたそうで、関係者からも、相当荒れた生活を送っていたと伺った。

 家族関係もなかなか複雑で、酒からくる家庭内問題などもあったようだが、深入りはしない主義なので割愛する。

 但し、娘に奇術師の筋道を作ったり、仕事を共にするところなど、決して子知らずの人ではなかったようである。

 戦後はハーモニカ楽団を結成し全国巡業をする傍らで、漫才大会などに出演。柵木芸能に残っていたチラシなどには、なぜか「NHK専属」とある。

 1953年頃、バンドマンから転向してきた宮田昇司と組んだ事もある。当時を知る青空うれし氏によると、「章司はまだ漫才になったばかりだから、受け答えするばかりで、実際はススムさんが漫才の先導をしたり、ハーモニカ吹いたりしていたよ」。

 その後はボードビリアン出身の旗上ヒロシ(旗上寛とも書く)とコンビ結成。

 1955年に発足した漫才研究会にも早くから入会し、発足記念大会にも参加している。

 数年後、ヒロシとコンビを解消し、丘コエル(石井一 東京出身 1932年5月3日~没? 1954年にススムに弟子入りし、漫才師となったが、病気のため、一時休業。復帰後、師匠とコンビ結成。元は歌い手だった、と夏美氏の証言)コンビを組んでやっていた。

 1958年には、漫才研究会のやり方に反発し、宮田洋容栄龍・万龍道雄・一歩光児・光菊信子・秀子と共に脱会、東京漫才名人会に移籍している。

 1960年代に入ると漫才から一線を退き、ハーモニカ漫談へと方向転換。1961年発足の「東京漫才協会」にも携わり、幹部として迎え入れられた。晩年はギター、ハーモニカ、足にタンバリンをつけた珍芸とリズム漫談を看板に活動していた。

 娘の轟夏美氏によると、「晩年は私と二枚看板で巡業や余興などに出演していました。若い娘がいると会社や興行師なども仕事をくれましたから」。

 巡業や浅草の劇場を中心に精力的な活動を続けてきたが、長年愛飲してきた酒が祟り、癌を患って53才で夭折したという。谷中にお墓があるそうだが、この辺りの事はいろいろあって伺いそびれてしまった。

 長女が奇術師の轟夏美、次女の夫(義理の息子)は桂光一である。

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